結界師

滅紫

沈黙は確かな質量をもって躰に圧し掛かっていた。
息遣いだけが聞こえ、臭いもせず、ともすればその呼気すらも掴めないほど相手の存在は薄かった。そうして部屋全体に充満していた。
いるのにいない。いないのにいる。どちらかは解らないままに、耳が量る沈黙の重さがそれでも自分以外の存在を教えた。
耳だけが。
耳だけが彼の存在を確認しているけれど。

「……そこにいるんですか、」

空気は言葉の大きさだけ震え、再び沈黙を呼び、それはほんの少し前よりも遥かに重く。躰に降る重さに自然頭が垂れ、――まるで、首を切り落とされるのを待つ罪人の様に。

 すみません、でした

沈黙が、ただ重かった。


翡葉+限:この暗闇の中、耳だけが感じる沈黙の重さ