結界師

白殺

たとえばどれだけ信頼されているのかなんて、そんな曖昧なものを量ろうとはした事はなかった。それは手から零れる水のような存在で、形もなく落ちていくだけ。そんなお決まり文句はやっぱりお決まりになるだけあってその通り。過不足なく上手い表現だと思うので口に乗せて遊んでみる。手から零れる水のよう。零れて元に戻らない。覆水盆に帰らずの信頼、信頼。信頼と信用。
信頼と信用は違うのだなんて、両方に共通している「信じる」事すらできない自分にはどっちもどっちで意味を為さない事甚だしく。
でも、それは、信じる事は。
自分自身が判断し決める事なのだろう。
信用しようかなと思って。
その信用する対象が血の繋がっている正真正銘自分の兄だと言うのに、ならば自分の方がきっとずっとよく解っているのだろうに、判断の決め手を他人である自分に委ねるその思考回路がさっぱり解らず、呆けた顔をしてしまった。
彼が信用ならないという兄は自分にとっては絶対の存在で、「兄弟だから必ずしも何の疑いもなく信用できるわけではない」、彼の言葉を否定できる言葉も経験も持たない、寧ろ肯定するような経験しかしてこなかった自分ではあるが、それでも自分を認めてくれた存在である事にも変わりはなく。
暫し訪れた沈黙を壊す術もなく、心中を誤魔化すように視線だけを空にやれば、
「――あ、あの雲斑尾に似てるんじゃね?」
長い尾を引いた白い雲を指して傍らの彼は笑った。
どうしてだか、自分もそう思ったのだとは言えずに「バカか」、毒吐いた。


良守+限:手から零れる信頼信用、覆水は盆に帰らない