朱鷺
姉に似ているのだ、と思った。
派遣された先の烏森の結界師、片方はあの人の弟だと言うから少しは期待していたのに肩透かしを食らい。
やたらと生温い事ばかり言うソイツの性格は、正統後継者という温かい毛布に包まれて育ったからなのかどうかは定かではないにしろ、兎にも角にも眼中外。
もう一人はどうかと言えば、二つ年上の女で。
女なのに――逆か、女だからこそ毅然としていて、かつ気丈とでも言うのだろうか。
夜な夜な妖を始末している様な人間には見えずに、こちらはこちらで違和感の様な、妙な感じを抱いた。
どこかで、見た事のある様な。
女の方が白い結界師の装束を着ているのを見た時、この暗闇で白い服なんて目立つだけだと心の中で少し莫迦にした。
それでも「少し」だけで、ソイツを頭から哂う気にはなれず。
家に戻った時、どうしてだか妖の血に塗れた自分の姿を見て哂いたくなった。
自分はもう慣れた光景だけど。
――あの女も妖の血を浴びる事があるのだろうか、と。
ふと空いた間に、女結界師の白い右腕を走る引き攣った跡を見つけ、あんまり似つかわしくないその傷に眼が止まった。
少し、一秒にも満たなかっただろうその注視に、目敏く気付いた女は「気になる?」と聞いてきた。
傷から視線を逸らし無言で通せば、女の目元がふっと和らいだのが視界の隅に見えた。
何か言うのかと思ったが、それもなく。
自分の無言より相手の無言がやたらと気になって、いっそ自分が立ち去ろうとした時。
「――今度ウチにご飯食べに来なさいよ、」
限君、と。
言われて振り返れば。
最初に出会った時の既視感の正体を、知った。