翳
御形は多分、綺麗な顔をしているのだろう、と思う。
見ていて厭きのくる様な人工的な造りではなく、この緑深い山の中で育まれたそのままの形で、陰翳に富んだ様々な表情を見せ、飽きる事のない顔だった。
それでも、ふとした瞬間。表情が全く見えない、影に飲み込まれた彼を知る。
傀牙を探知出来る、その眼。生身の躰で、人外、人を喰らう存在を感じる事が出来る限られた人間。
養成所の人間は皆この眼を恐れて彼に近付かない。御形の事を何も知らない、知ろうとしない者達が御形の陰口を叩くのは気に入らなかったが、それならそれでずっと近付いて来なければ良いとも思う。
二人が鍛錬している河原の木陰、ちらちらと葉を透ける陽の光を受けて浅い眠りに耽る御形の顔。自分に凭れ掛かる隣の少年のその長い睫を見て、やはりこいつは綺麗な顔をしているのだと思った。