一斤染の紅を刷く
名取が小さく柊と呼べば背後で此処に、応える声はすぐ近く。柊、少し頼まれてくれないか。何なりと。少し触れさせてくれ。言い終わらない内に綺麗な形をしていると褒められる事の多い長い指をその首筋に這わせると、そのまま着物、合わせ目のその内に滑り込ませた。指先に感じる温度はひんやりとしていて、それは当然だったこれは妖なのだから。まるで爬虫類のような冷たさが解けて熱を帯び始めるその時を名取は知っている。
名取はそのままなだらかに盛り上がる方へと掌を滑らせた。感じる滑らかな肌は汗一つかいていない。妖なのだから当然だ。発汗作用など人が動物が生き物が有していればそれで十分な機能だ。人でも動物でも生き物でもないこれにそんな機能など必要ない。なのにどうしてこれは熱を有する事を知っているのだろう。これはこんなにも柔いのだろう。指先に力を少しばかり込めれば、人の女と同様の膨らみは、矢張り女のそれと同じように柔らかかった。
……主様。女妖の声は鈴の音よりも小さく聞こえた。ぬしさま。邪魔に感じられた着物、袂を左右に開けば剥き出しになるのは薄い腹に胸に小さな乳房に、そういう女の性を感じさせない、未だに少女のような線を持つ躰だと解っていたのでそのままにした。そのまま差し込んだ手で浮いた肋の骨の窪みをなぞり皮を擦り骨も何もない内臓と肉の柔らかさをそのまま曝している腹を撫ぜた。ぬし、さま、
顔を近付けてその柔い腹に沈ませて、つきと血を吸うように肌を吸った。女妖の肌は冷たい。それを舌先で突付き、押しては舐めて己の熱を分け与えた。一点だけ、面ではなく点に。そこから熱を直接内部に差し込んでいくように。そこにだけ血の花を咲かせるように。――なとり、
あぁ、名取は頭を腹に埋めたまま笑った。漸く名を呼んだな、柊。名取。私は使役しているモノを無理矢理組み敷く趣味はないんだ。咲かせたばかりの花を摘み取るように、その熱い肌を唇で食んだ。
名取柊:摘み取る為に花を咲かせる。殺すために育む