おおきく振りかぶって

飛行機雲的至極単純明快理論

しっかりしている。
その言葉はもう聞き飽きた。

「泉はしっかりしているよなぁ」
さりげなく何気ない、浜田のその言葉の裏に、泉は敏感に別の言葉を聞き取った。
溜息一つ、つきそうになるも――浜田の行動パターンを自分が把握している様で嫌になる――、堪え、自身もさりげなく言った。
机をばんばん、叩いて席の横に立った人物を見上げる。
「……浜田、」
購買の人気ランキング1位と引き換えなら、見せても良いよ。
用件を言う前に、先を塞がれた浜田は苦笑いをしてみせた。
「今日当たってんのすっかり忘れててさぁ、」
英訳、苦手なんだよね俺。泉が机の中から青い表紙のノートを取り出すのを見ながら、「購買のって、やきそばパンだろ?」 浜田は確認した。
「その通り。序に今日の俺の昼飯なんで宜しく」
引き換えだからね、売り切れてたら見せないぜ? 淡々と言ってみせれば、自分より一つ年上のその男は「やきそばパン限定なの!!?」、声を大きくした。
人気商品は売り切れるのも早い。
特に昼休みが始まって少し経ってしまった今の時間に行って、未だ尚残っていれば可也運が良い方だ。
「せめて代替品でも可にしてくれよ泉〜」
「却下。先輩ネットワーク使って、やきそばパン買って来て下さい」
急がないと売り切れるよー。間延びした棒読み口調で、相手の出方を伺う。
「〜っ、わかった、買ってくる、買ってくるから絶対ノート見せろよ泉!!!!」
約束な!! そう言い置いて教室を駆けて出て行き、残された泉はノートを片手にひらひら見送った。
「……俺だって別にしっかりしてるタイプじゃないんだけどねー」
アンタがあんまり駄目だから、しっかりせざるを得ないだけなんじゃないか。
思い、直ぐに、わざわざ当たる場所でもない箇所の英文を訳してきた自分に、どれだけ浜田の世話を焼いてるんだと自問し。
阿部の事を笑えないと、脱力した様な笑いを一つ漏らした。


浜田+泉:焼きそばパン目指して頑張って下さい