紫黒巡礼の夜に
その眼には何が映っているのでしょうね。後ろで纏めていた黒い髪を解いてゆうたりと背中に流した後、的場はそんな事を口にした。その眼は、一体何を映しているのでしょうね。
それに答える事なく伸ばされた指先には鋭い爪、代償を求めるそれに載せられたのは一房の髪。まずはこれだけ、残りは後ほど。仕事を終えたら、です。
本当にくれるんだろうなと言いたげな視線を感じて的場は笑った。あげますよ、しかし、全ては代償を伴う契約なのですから……先払いしているだけでも、良心的だと思うんですが。闇の中に滲んだ笑みは深いのか浅いのか判別が付かない曖昧なもの。
遠くなっていく背中を眺める的場に、……おまえのめにはなにがうつっているのです。最近使い始めた妖が問うてきた。そのめには、なにをうつしているのです。
主に向かって何かを問うなど、全く教育がなっていませんね。嘆息した的場はそれでも返した。この眼には特別なものなど何も映っていない、映っているのは人と妖と、それだけです。
それだけ、が他のものにとっては理解できないだろうものを含んでいる事を知らないはずはないのに、黒闇と同じ髪の色、同じ眼の色をした男は微笑した。
的場:「このめがうつすもの」