黒子のバスケ

003

それなら、黄瀬、と笠松は言った。
「俺を抱いてから辞めたって、遅くはねぇだろ」
それから、なぁ?と笠松は笑った。
「お前、俺で何回抜いたよ」
それだけで、黄瀬は。

眼の前の男を殺してやりたいと思った。





たとえばこの蛍光灯がきちんと交換されていて、小汚い部室の中を白く明るく隅々まで照らしていたら、こんな隠微な雰囲気は一掃されたのだろうか。
たとえばこのベンチがもっとしっかりした作りで、二人分の体重に悲鳴をあげてぎしぎしと軋まなかったら、こんな扇情的な雰囲気は一掃されたのだろうか。
考えてもどうにもならないことを脳の思考する部分の底にこびり付かせたまま、黄瀬は下半身を曝け出して己に跨る男の下唇をかり、と食んだ。半開きになっていた口元はそれできゅっと閉じられ、それをこじ開けるように尖らせた舌で突付けば簡単に受け入れられた。黄瀬自身を受け入れたときのように、呆気ないほど簡単に。
今の拒絶も本当の拒絶ではなく、唯の反射だった。拒絶と言う駆け引きすら面倒臭がる男の過去と性格を想像しかけて、黄瀬は潜らせた自分を強く打ち付けた。仰け反った咽喉の奥から、音を含まない細い空気が漏れる。
「……声、何で出さねぇの」
「――声、聞きたいんなら出してやってもいいぜ」
攻撃的ににやりと笑う様が、それなのに妙に色めいて見えて下腹がざわめいた。既に血は十二分に芯を巡っていて、それなのに血ではなく熱が満ちて、ぐっと硬くなるのが解る。芯の中の芯が屹立する、こんな勃起の仕方を黄瀬は他の誰に対してもしたことがなかった。
笠松の躰も黄瀬の熱に反応して、ぐっと締まる。収縮する内壁に搾られた自身からじんじんと気持ちよさを感じる。
「どうすんだ、出すか、出さないでいいのか?」
「――出さなくていいよ」
演技で喘がれたって、萎えるだけだ。黄瀬は笠松の細作りながらも存外しっかりした腰を掴むと、内臓の奥深くを抉るように突き上げを開始する。ぐちゅりと中で出した精液と柔い肉襞が絡み合って潰れる音が部室内に響き、腹の辺りに充血した笠松の性器の先端が擦り付けられる。しとどに濡れたそれは既に一度達していたが、弄られもしないのに再び勃ち上がっている様を黄瀬は嘲笑う。
「後ろだけで勃つって、アンタどんだけ咥えこんで来たんだよ」


back