遭遇と問答
私は悪魔ですはいそうですかって信じられる奴が何人いるのか。
少なくともオレは信じない。そもそも人間の姿をしているってだけでお世辞にも上等とは言えない悪魔なわけだけど。
人間の姿をする必要があるのなんて、余程暇を持て余した悪魔か吸血鬼か、淫魔くらいだ。後は契約で人間の姿をとることを命じられている奴か。
「……でも、アナタも悪魔なんでしょ?」
悪魔の大嫌いな太陽の光の色をした髪が、傾げた首の動きに合わせてしゃらんと揺れる。
「まーな」
眩しくて、見ているだけで吸血鬼なら溶けそうだ。
眼を細めたオレは、ブラックのコーヒーを一口啜った。
人間の飲み物の中ではこれが一番好きだった。
何と言ってもこのすっきりした苦さが脳味噌に突き刺さっていい。
一人満悦するオレを見るのは、これまた悪魔の大嫌いな太陽の光の色をした眼。
「しかも、……淫魔、なんでしょ」
「まーな」
肯定したオレを、そいつは唯じぃと見つめるばかり。
射抜くような視線を流しつつ、モリヤマが言っていた「三百人切り」の男ってのは確かに綺麗なもんだなと内心感心していた。
しかもこの若さでその人数、大分水増しされているとはいえ大したもんだ。
人間の女ってのはそんな簡単に釣れるのか、それともこいつが凄いのか。人間の癖に。
「……悪いんスけど、どー見てもアナタ、淫魔に、ってか悪魔にも見えないんスけど。唯の体育会系熱血主義の人にしか見えないんスけど」
「その体育会系熱血主義とやらはよく解んねーけど。オレ、一度も人間食ったことねぇからな」
「……はい?」
「だから、人間で言えば童貞? 処女? っての? それだ、それ」
「よ、よくそんなこと恥ずかしげもなく言えるっスねぇ……!」
そいつ――黄瀬が呆れた顔をしたのが癪に障って、思いっきりその小綺麗な顔を蹴り倒してやった。