黒子のバスケ

title 140

01

黄瀬の隣にいる子は柔らかそうで温かそうで、自分には縁のない甘そうな、そう、香るはずもない食べ頃の果物の香りがした。何見てるんスか。雑誌。あぁ。隣に座った男の躰からは香る匂いに腹が鳴る。そう、これは食べ頃の男。だから、もう、

けだものになりたくてかみつくよ


02

勝気な印象の裏側に静けさを好む心がある。だからこの背中は時折彼専用になって、今日もまた然り。規則正しい拍動と呼吸音を添わせた背骨で感じ取る。今日はどうした。別に、小堀の声聞きたかっただけ。でも黄瀬の声のがいいだろ。…意地悪だ。なぁ幸、それはさ、

ただの恋だよ


03

あれ久し振りじゃん何がだよだってお前いっつも連れてるじゃん駄犬をありゃ今海外だマジで流石売れっ子。繰り返された一連の流れが途切れ出した頃一人飯食うつまらなさに久々ファミレスそして痛感。思いがけない一撃必殺案内笑顔でウェイトレス、寂しくなった。

お一人様ご案内


04

笠松にとって彼の言葉等所詮戯言世迷言。数多の女を鳴かせたその舌先の巧みさよりも、躰を暴く時の如何ともし難い焦りにぎこちなくなる指先の乱暴だけを信じた。無垢な暴力に彼の真摯を見出すしかないのは哀れに近かったが、それ故に

荒々しい指先が死んでもいいくらい幸福だった


05

センパイ達はオレの努力という奴を認めてくれるけど、オレが時折感じる心臓をきゅうと締め付けるような感情までは見てくれない。だって去年オレは此処にはいなかった。それを解っているはずなのに、笑い合ってじゃれあって。あぁ、ほら、

みんないつもちょっとだけずるい


06

一回幾らの関係の密度は空疎にも程があって、行為の後に抱き締める事までが黄瀬にとってのセックスなのか、笠松には全てが初めてのことだから黄瀬が基準だった。だから笠松にとってのセックスは黄瀬と同じだった。後幾ら貯金があったかなんて考えて。指折り数えた

抱擁の有効期限


07

オレが本当に金で買われてたって思ってたんスか。呆れ混じりの笑い声。つかそんな安くないし。端金でも、精一杯の全財産。ねぇセンパイ。堪えきれなかったのか、ついには満面の笑みまで浮かべて。今度はオレにこの金で今夜の貴方を買わせて。そしてまたここから

あたらしいつみ



※ツイッターでお金を介在した黄笠関係、という呟きを受信した数日後に書いてみた黄笠。


08

今日はしないよと大人びた顔と声、お前そんな性格じゃないだろうと尖らせた唇に軽く触れた相手のそれは同じように熱い。明日朝からバイトでしょ、もう寝ないと、そんなことを口にされても普段が普段なのに、それでも、その掠めた指先に安堵した。本当

ふれあえないのにやさしい


09

オレ国産ホラー駄目なんだよ、貞子以来無理。焼きそばの中にミミズ紛れ込ませるみたいな、日常の中に恐怖差し込んでくるみたいなの、無理。まさかの苦手にそれじゃあアクションものにしましょうか。うん。下段の国産ホラーコーナーから顔を上げて。

伸びた背中の清い弱さ


10

天使だよと口にしたときの元チームメイト達の顔といったらなかった。ついに、と言いた気な眼差しは一様に可哀想なものを見るそれでもあり、強ち間違いでもない。彼は強く清く正しさを背骨に埋め込んだような人。そう思わないと理性なんか保てない。進んで自ら

淡いうそに雁字搦め


thanks* Ms. AKI


11

オレはセンパイが全部欲しいと真摯な男に微笑う自分は少しばかり彼より大人だったので、全部はやれねぇなと教えてやった。どうして。どうしても。でもオレはね、センパイがあの日流した涙だって本当は飲み込んでしまいたかった。笑えない一言。黄瀬、お前は

痛みさえ食らうのか


12

笠松への盲目とも陶酔とも捉えられるだろう感情の名を笠松自身に問うた時、何故か彼は酷く傷ついたような顔で、それは唯の熱狂だ、直ぐに収まると返された。心臓の真上に導いた掌が離れていくのを掴んで留める。もうずっと、

なりひびく心臓に気付かないなんて嘘


13

刹那すら惜しんで見つめる先には規則正しい呼吸と共にこの場に憩う人がいて、仄かに赤らむ頬に子どものようだと笑う己の唇から漏れる呼気にすら驚いて息を止めてしまう。声を殺して顔を寄せて、なだらかに盛り上がる瞼の下の黒を思う。あなたはオレに

瞬く間さえくれなかった


14

爪と爪の先が掠める程度の接触でも触れ合ったが最後全てが終わると知っていた。先輩と後輩、主将とエース、それ以外の関係性を自分達の間に持ち込んだ途端に、繕い続けた夢のような関係から覚めてしまうことを解っていた。解れても縺れてもそれを

ゆるさない理性とゆるした感情


15

高校の間だけの擬似的な恋愛だということを頭の片隅に置いているだろう彼の言動の端々から漏れる感情の彩りに、どうして尚もこの関係を偽りのものだと意固地になって言うのか。そう言うことで今を満足したいのか否か。でもね、オレは

彼に置いてゆかれるもののひとつになりたくない


16

素直に黄瀬の好意に満ちた行為を受け入れることを良しとできないのは張り続ける意地と見栄と頑なな心の所為。それでも甘く暖かなその好意に緩く撓んでいく表情や声や躰は無視するには余りにも大きすぎて、しぶとくも渋々といった態でお決まりの文句と共に

抗うふりでくちづける


17

語る言葉を持てずに黙って抱かれるだけだった日々が終わりを告げる。何も言わなくていい頷くか否かだけでいいと黄瀬が問うてきたこと。センパイはオレを誰かの代わりにしていたの?答えはイエス。オレを好きだというお前の代わりに、オレを好きじゃないお前に、

疚しいから抱かれる


18

誰にも触れられたくない部分があって、オレも同じで、だからそこをお互いに尊重しましょうなんて改まって口にしたことはないけれど、それに触れそうになった瞬間センパイの透明で薄い膜は一気に強度を増してオレを弾き出す。故ににずっとこの先も

きみはぼくのかなしさを知らず


19

好きだよ大好きだよと甘く煮た蜜の言葉を気持ちをとろとろと全身に垂らし塗りこむように触れてくる恋人のことを実際笠松も大切に思っていたから、同じ言葉を返せなくても拙い舌で指で彼の躰に触れて気持ちを描いて。あぁでも―センパイ今度はこれ着て!

それでもぜんぶはゆるせない


20

もうずっと黄瀬と抱き合ってきて、最初の衝動任せの遠慮も余裕もない行為が今となっては懐かしいくらい。負担にならないように、なんて後ろから笠松の中に入ったままで動こうとしない黄瀬の大きな掌がゆうたりと腹を撫でる。それを掴んで息づく性器に導いて。なぁ

惰性でもさわって


201105~

thanks title * @j_on_m