黒子のバスケ

a world of difference 2

お前って本当無自覚に人を傷つけるよな。
前触れなく差し込まれた森山の言葉に、オレの笠松センパイ話を展開していた黄瀬は、口を開いたまま硬直した。
「……え?」
「お前さ、笠松がいなくなった途端にそういう惚気話するのはどうよ。いるときはいるときで帝光ってかキセキの話ばっかりして」
「だ、って、尊敬するバスケ選手って話だったから、オレ」
青峰や黒子、緑間に紫原、赤司に桃井。自分にはない才能を持った仲間達は、同年代でありながらも黄瀬にとっては尊敬できる対象だった。だから。
「センパイも尊敬してる一人だけど、目の前で話し出したら恥ずかしがって絶対止められると思って……なら、今の内にって。惚気たつもりなんて、なかったんスけど」
黄瀬の弁明に、森山は涼しげな目元を小さく歪めた。
「尊敬ねぇ。オレからしたらどっちも惚気話だったけど。ってか恋人いる前で他の奴に対しての評価で『大好き』とか言うのって無神経じゃね?」
「……笠松センパイは、そんな小さな人じゃないっスよ」
言葉の棘を無視しようにも、返す言葉には皮肉が混じってしまう。黄瀬に睨みつけられて、森山は今度こそ嘲笑を隠さなかった。
「お前がそうやって笠松を『大人』に仕立てあげてるだけだろ。そうやって自分のワガママと多情を全部押し通す言い訳を確保してんだよ」
飄々とした態度は崩さずに、しかし森山は真正面から黄瀬を切りつけた。
「お前さ、『好き』って言葉安売りしすぎなんだよ」
何も言えない。
「もしお前が別れ話切り出したら、笠松黙って受け入れるんじゃねぇの。だってお前の『好き』ってその程度の重さだもんよ」

何も言えなかった。


a world of difference:大変な違い

20110503