gather roses
恋と愛の違いは何か。
恋していると愛しているの違いは何か。
「……黄瀬、お前熱でもあんのか?」
笠松が怪訝そうな顔をして黄瀬を見た。口振りは呆れたそれだったが、黒の矢が真っ直ぐ黄瀬を射抜いたので、その言葉に含まれた気遣いに黄瀬は笑った。
「や、熱はないんスけど。前に、映画で妹に恋するみたいな題名のやつあったでしょ。それに端役で事務所の先輩出てたんスけど、その人が言ってたんスよね。『妹を愛するなら普通なのになぁ』って」
何か、唐突に思い出したんスよ、とぎしりベッドを軋ませながら上体を起こした。互いに寝巻き代わりのスウェットを穿いているだけの姿で、すぅと前にしなる黄瀬の背中の美しさに笠松は眼を細めた。柔らかく厚い筋肉の、その真ん中に浮き上がる背骨の凹凸が作る陰影は明瞭で、曖昧を拒絶する潔癖さの表れのようだった。
「……お前は、たとえば、オレのことはどう思ってんの」
黄瀬に倣い躰を起こした笠松にちらり視線を寄越し、彼は笑った。
「たとえば、は余計スね、センパイ」
「うっせ」
そっぽを向いた笠松に、「怒んないで?」と肩口に頭を埋めるように上体を傾けてきた黄瀬は、シーツの上に投げ出されていた笠松の手にそっと自分の手を重ねた。
「……前は、恋してた、のかな。それだけ、で。今は愛してる、けど。……やっぱり、恋もしてるスよね」
「……?」
「……今は、解んなくていいスよ」
ゆらり黄瀬の笑みが揺れて、ゆるり指を絡め取られて、そのままゆっくり躰をシーツに沈められる。
「……何だよ、何でまたこうなってんだよ」
僅かに眉間に皺寄せ、憮然とした表情の笠松に黄瀬は含み笑いをする。
「恋と、愛の違いを教えてあげようかと」
「別に知りたかねぇし、興味もねぇし」
「そう言わないで」
尚も笑う黄瀬に、笠松は小さく息を吐く。本当は、もう少し眠りたかったのだけど。
gather (life's) roses : 歓楽を追う