黒子のバスケ

my little blossom

ひらり口の中に飛び込んできたものに、笠松はおっと声を上げた。
「どうしたんスか?」
隣を歩く黄瀬が笠松の顔を覗き込むと、んっと舌先を出して見せる。
「――桜?」
「ん」
赤い舌先にほんのり淡く色づいた花びらが一枚張り付いている。
「またタイミング良く」
「ん」
舌を出している所為でうまく喋ることのできない笠松が、小さな迷い子を指先で掬おうと手を口元に持っていく。その手首を黄瀬が掴んだ。
「……なに」
「それ、後でオレに下さい」
口移しで、と告げると、笠松は頭が痛いと言うように額にもう片方の手をやった。
「どこのロマンチストだ」
「アナタのロマンチストです」
笑みを絶やさずに返せば、胡散臭いと一言で切り捨てられた。
引っ込められた舌には、しかしまだあの淡い春の結晶が溶けずに残っていることを黄瀬は確信している。





(口移しで春を知る)


my little blossom:《口》可愛い子、愛人

(20110411)