黒子のバスケ

be a dead pigeon

笠松がそれを見つけたのは偶然だった。
黄瀬が財布に何か後生大事に仕舞っているのは前々から気付いていたが(大枚入っているとかそういう理由以外で、何か大事なもの、だ)、何の気紛れか気の緩みか解らないが、今その財布が眼の前に、開かれて置いてあった。
更に何というか、ここまでくると罠なのではと勘繰りたくなったが、ひょいとカード入れの一番後ろから何やら覗いていて、それは小さなポラロイド写真のようだった。
(不用心すぎんだろー)
開きっぱなしのそれを閉じてやっても良かったが、というか、元よりそうするつもりだったのだがうっかり写真に気付いてしまってさてどうしようか。
いや、そのまま畳んで戻ってきた黄瀬に財布の管理しっかりしとけと言うのがベストだ。と思っているのに、その写真が気になってしまって、ちらちら気になる女の子を見る小学生男子の気分で少し離れたベッドの上から、手にした雑誌越しにローテーブル上のそれを見ること暫し。そろり。

「――お待たせしましたー……っス?」
がちゃりとドアを開けて戻ってきた黄瀬は、ベッドに突っ伏す笠松を見つけた。
「どうしたんスか、センパイ?」
「な、何でもねぇ!!」
「何でもないって……」
己の心臓がばくばくいっているのを無理矢理シーツに押し付けて音を殺そうとする。
黄瀬が近付いてくるのが解り、焦る。
(やばいやばいやばいー!!)
今のこの状況はどこをどうとっても笠松に不利だ。
恥ずかしさのままに黄瀬を殴り倒しても良かったが、殴り倒す原因となるそれを見てしまった点に関しては――それも勝手に――完全にこちらの分が悪い。
つまり最善は何もなかったことにすることだったのだが、それを台無しにしているのが自分のこの様であり、笠松はぐるぐるぐるぐる思考と眼とを回らせた。
「センパーイ?」
ぎしりとベッドに黄瀬が乗り上げる振動。
覆い被さってくる、手は顔の脇に突かれて。

「どしたの、センパイ?」

(どうしたもこうしたも、お前が!!)

あんな写真、後生大事に仕舞ってるからだろーが!! と声に出して怒鳴れればどんなに気分がスッキリするだろう。
ぐるぐる思考が回り、
眼も回り、
ぷすんとエンストを起こした笠松が、下りてくる顔の近さに白状するまで後三秒。





(もうどうしようもない!)


be a dead pigeon:お陀仏だ、全く見込みがない、一巻の終わりだ。

(20110127)