絶望計算式ナンバーナイン
笹塚の心には何もないのかもしれないと瞬きを繰り返す瞼が無意識の内に閉じられ眠りに落ちてしまうように、至極当然の成り行きとして心を覆ってしまう重く黒い帳がある。その重さにも関わらず厚みはほとんどなくともすれば靄のように薄く透けそうで向こう側も見えそうなほどなのに、焦点を合わせようとするとピントがぼけてぼんやりとした曖昧な形でしか掴めずに、輪郭が膨張し物質は解像度が低くなり即ち笹塚と言う存在も薄くなった。ゆらゆらと揺れる帳はその重なり方によって、本当に時々、それこそ瞬きの間に先にいる笹塚の姿を明瞭に見せてくれるけれども、それは気紛れな猫よりも酷い戯れに過ぎずに、筑紫が笹塚の心を捉えられる事など全くなかった。恐らくこれからもないだろう。
筑紫