魔人探偵脳噛ネウロ

いつか見た夢を水底から思う

夜明けは水底に沈んだ自分を彷彿させる。
さっと灰を刷いた空は、陽の光を一欠けらも含まない清冽な青の世界の天蓋だった。
ゆらゆらと月の不透明な白光の残滓が部屋の中をたゆたい、カーテンの向こう、遠くに見える褪せて灰みがかった青は、懐かしさすら催させた。
身動きせずにじっとしていると段々まるで水墨画の中に入りこんだように思え、空気も滲み光も滲み、音すら滲みそうなほど肌を包む涼はたっぷりと水気を含んでいた。
褪せたような青は死人の肌の色、抱かれた空気の波間、この躰は沈んで世界を見上げる。
どこまでも静謐な世界の奥底から覗く外は、ゆっくりと朝の光に蹂躙されているようで、反面柔らかな朱鷺色の靄に包まれているようでもあった。
まるで夢の中で。

再びこの意識が覚醒する時にはもう夢を見る事はないだろう。


笹塚・失踪の朝

(2007**)