魔人探偵脳噛ネウロ

顔も見えない神様、孤独

ですから、やはりわれわれは夢の中での食物ではなく現実の食物を、幻想の異性ではなく数歩先で媚を売る異性を、頭の中の敵ではなく背後に迫る敵を実在と呼ぶ。

ならば、彼の頭の中にいるだろう敵は、一体どんな容を為しているのだろう?
実在ですらないその存在は、どんな容を為しているのだろう?
彼は、顔を見る事もない神と同じように、顔のない敵を頭の中で殺しているのだろうか?
疑問符ばかりが増殖していく。

――顔のない敵を殺す事に、一体どんな意味があるのだろう?

その敵は、血を流して彼に赦しを請うだろうか?
その敵は、血を流して彼を嘲笑い蔑むのだろうか?


筑紫候平という男の独白
中島義道『時間を哲学する』講談社現代新書より引用・抜粋
中島氏に多大なる敬意を表します

2006XXXX