魔人探偵脳噛ネウロ

悲しく鳴く鳥を泣きながら食べる

留まるべきがこの世界でなければならない理由等何一つとてないのだ。




笹塚さんが捕まえてくれますよね




もしも、
私が     を殺したら、
絶対に、捕まえてくれますよね、
笹塚さんが、捕まえてくれますよ、ね、


…―
……――
………―――
…………――――あぁ、捕まえる、人殺しは、捕まえるよ

――――…………
―――………
――……
―…
…有難う、




どうしてそんな言葉を言ったのかなんて推し量るべくもなく、
白いシーツはためく中、白い雲が天蓋を覆い、白い煙が立ち昇っていく。
散々真っ当に病人扱いされている病人の自分と同じような、それでも女特有の柔らかさがぎぅと爪の食い込んだ掌の張りで解った。
ぷつんと簡単に裂けてしまいそうな彼女の握られた拳の白さに、気付いていたのに気付いていない振りをした。
でも、解っていたのだ。
解るなんて判る前からあぁと深く澱んだ溜息を吐きそうになり、その代わりに大量に煙草を吸い込んで誤魔化したのだ。
(この子も、)
深く深く吸い込み有害な煙で肺を満たし思考を腹の底に押しやる。
しくしく細胞と肉を刺激する粒子が、今は有難かった。
この痛みで、打ち消されればいい。
浮かんだ思考の気泡を破裂させていけばいい。
このまま侵されて、そう、灰色の懸念など真っ黒に塗り潰されてしまえばいい。
それを強く願うも、願った分だけ確実に思考は咽喉元にまでせりあがってきた。


(――この子も)




どうしてこの世界でなければならなかったのだろう?


笹塚と弥子の話

(20060611)