以前見た少年の陰影を彼の背中に見た
大体それがどうしたって言うんだ。
セックスも駄目暴力も駄目博打も駄目だなんてどこぞの戒律厳しい宗教団体なんですかって話だろう。
そのくせ薬漬けにしようと何だかんだで食事飲料空調にまで全てに仕込んでやがるから、息をするのも一苦労、外に出て一服吸っている最中に初めて奴に出会った
何だか不思議な奴で、やられまくって腰が抜けているような感じで足がふらふらしていて(セックス禁止令は出した側と強い奴には適用されない!! 当然の如くに!)、
薬漬けにされているようでもあったのだけど、どこか怜悧な空気を足下に引き摺っていて、あぁこいつは只モンじゃねぇななんて堅気じゃないところで判断する。
隠しているつもりもないようで、かと言って見せびらかしているわけでもなく、内側から滲み出るものってのがある。
臭いだとでも言えば、同類なら通じてくれるだろう。
何だか、酷く投げやりに生きているような感じがした。
「……アンタ、一服するか?」
丁度眼の前を通り過ぎようとしたそいつに、くしゃくしゃになった箱から一本、頭だけ出して差し出せば、俺の存在に気付いていなかったみたいにびくりと不自然に止まって、まるでぜんまい仕掛けで動いているようだった。
「……仕込み?」
口元の動きは最小限に留められて、そいつの云わんとしたところを察する。
どこまで落ちれば気が済むと思われてんだか、昨今のドブの住人は。
「んなわけねぇだろ。俺は薬には手を出さねぇ」
莫迦にすんなよ。俺はこう見えて昔気質で通ってるんだ。だからこうして外に監視の眼を盗んでまで一服しに来てる。
差し出された煙草をじぃっと、穴が開くほど凝視して、そいつは足を持ち上げるのすら面倒みたいに、地面を擦るように近付いてきた。
ネコ型ロボットよろしく、地面から数ミリ浮いてんじゃねぇのかと思わんばかりの抜き足差し足忍び足。
ひょいと骨が浮き出た長い指で、一本、飛び出た煙草を摘んだ。
骨と骨の接ぎの部分は当たり前に太く、けれども、その先の部分は肉を一切纏わない骨そのものの細さで、こいつ何も食ってねぇんじゃなかろうかと長年染み付いた習性で危ぶんだ。
そんな躰に煙草をくれてやるほど心優しい人間になったつもりはねぇが、こちらから出した手前、引っ込みがつけにくい。
そういう俺の戸惑いを知ってか知らずか、自分でも僅かに揺れた手元が失敗したと思ったし、兎角そいつは摘んだ煙草を途中まで抜き出して、また重労働とは無縁な痩せ細った人差し指で押し戻した。
「……有難く、頂きたいところだけど、」
やめとくよ。
するりと身を翻したそいつは、けして薬漬けのトんでる野郎でも掘られて抜かれた野郎でもないと知れたが、一度焼きついた印象があんまり強くて折れそうだと思った。
以前(今も塀の外で待ってくれている女と)見た砂漠の少年のような陰影の濃さを、離れていくそいつの薄っぺらな背中に見た。