魔人探偵脳噛ネウロ

柔らかな爪を磨ぐ

作品の一部にR-15程度の描写を含みます。
十五歳以下の方(義務教育未了の方)の閲覧はご遠慮下さい。


爪が伸びたから、と爪切りを借りに来た男の真意を知っていた。

ぱちり、ぱちり、爪を切る音。
「随分と見ねぇ間に、アチコチに懇意の相手を増やしてるみてぇだな」
冷ややかな声、久し振りの声。
見える頭、旋毛のあたり。見下ろす青年は黙々と爪を切っていた。
「……釘でも刺しに?」
ぱちり、持った男の右足を下ろし、左足に持ち替えながら。
短い答え、探りを入れるわけでもない答え。
渇いた声の上に乗せられた感情は無味乾燥。
それが至極当然で自然。
これ以外のやり取りの仕方なぞ彼らの間には存在せずに、これだけのやりとりで成立するほど単純で空っぽな関係。
「どうせ言ったって、一つに留まる事なんかしねぇだろう」
「……」
ぱちり、
「そのくせに単純に淫売って訳でもねぇからお前は面白い」
「……」
ぱちり、
「……そりゃ、どうも、」
ぱちり、
「やらせるのはお前なりの誠意ってヤツだろう、それをどうこう言うのは野暮ってモンだ。……でもな、」
ぱち、
「あんまり派手に動くな、嫉妬深ぇ奴も中にはいる」
……り、
「――お前は、バレてねぇつもりだろうがよ」

お前が隠してる爪が、本当は柔らかくないなんて事ぁ、もうとっくに俺は知ってるからな

……ぱち、り、
切り揃え終えた爪、持っていた左足。
長い指は、やくざ者の指と言うには勿体無いほどに端整。
顔は伏せたまま。
「……忠告、有難う御座います、――それで、」

俺は、誠意を見せるべきだ、と?

今し方自身が切り揃えた爪、親指を口の中に誘い込む。
ゆっくりと舌で舐れば、男は、自分の足の間に身を置く青年の首の付け根、項辺りを乱暴に掴み、猫でも吊り上げるかのように引っ張り上げた。

「解ってんなら、遠回しな事はやめろ」

そのまま深く首筋に顔を埋め、一日二日では消えないくらいの所有印をつけた。


失踪時。好き勝手やってます

(20051129)