魔人探偵脳噛ネウロ

アイから始まる終わりの歌を

いと言う彼の体温は36.3℃。俺の平熱くらいですよ、体温計を見ながら言えばお前いつもこんなに熱いのかと気怠るそうに小さく呟いた。熱いわけないでしょう、平熱なんですよ。返せばそうかぁ。妙に間延びした声にくてんと力の抜けた躰、その全体重を肩に感じ。普段ひんやり冷えた皮膚に触れれば、人並みに温かい事に違和感を覚えた。温かい、のに、熱く思えてしまうのは冷たい躰に触れ過ぎているからか。――これはもしかしなくともやばいんじゃ、そう思った瞬間に笹塚さんの躰が崩れた。


つ頃暇か? さいころを掌の上で遊ばせて笑みすら浮かべる男に明後日なら、恨みがましい声で渋々答える。明後日か、楽しみだな。何の邪気もなく健やかな笑顔を見せてくれる年上の男に、どれだけ高いものを奢らされるのだろうと心中立ちこめていた暗雲は、あっさり雲散霧消した。


つくばかりの気持ちも足取りも抑えられずに喫煙スペースへと向かう。多分そこには今日から上司になる男がいるはずで。(自分の相棒が殺人犯だったって)
身内に相棒に手錠をかけた男。一課内でも名の知られた男。髪も眼も服も雰囲気も全て色素という色素が薄い男。(あ、) あれ、だ。申し訳ない程度の衝立の向こう、煙草の臭いとヤニの色が沁みついたソファ、肘掛けから無造作に投げ出された脚。(あれが、)
笹塚刑事。そう思った瞬間、一気に心臓を打つ音が速くなった。どっどっと内側から叩く音。(あの、俺)、心の中でシミュレーションする。(俺、) 今日から三係に配属の、


ンドロールの最後まで観て映画は終わるんだよ。笹塚は席を立とうとした笛吹に向かって言った。――お前は、
「こんな映画の最後まで見ていろと言うのか!!?」
青筋立ててスクリーンを指差す、その先には
「いいじゃんエンピツしんちゃん。掛け金払えないって言うから安く済ませてやったのに」 今回の戦国大合戦は凄く評価高いよ? 奢らせたポップコーンを口に放り込みながら、なぁ筑紫? 笛吹を挟んだ席に居心地悪そうに座る後輩に同意を求めた。「ま……あ、笛吹さん……少し……」
鼻、啜ってましたし……。後半気を使って声を小さくしたものの、「お、オレは泣いてなんかいないぞ!!!!」 笛吹自身の怒声で無意味になった。


前だな、筑紫。茶化した声に「意地の悪い事を言わないで下さい」 意地悪くなんかないさ。にやにやしながら笹塚はぽん、筑紫の肩に手を置く。「充分男前と言われるに値する行為だった」
だから笹塚さんそんなんじゃ、控え目に反論しても「お前、あんなにさり気なく男に付きまとわれて困ってる女を助けられるなんて、なかなかできないぜ?」 だって仕方がないでしょう、「ゼミも一緒で、見過ごすなんてできません」
笹塚さんだって同じ事をしたはずです。「――それとも何ですか、困っている女性を見て見ぬ振りして行ってしまうような薄情な人だったんですか?」 無礼失礼ぎりぎりのライン、試すように言えば「俺だったら、」
相手蹴り倒して終わりだな。何でもないように平然と答えた男の、相当に意地の悪い笑みに、確かにこういう性格だったと筑紫は溜息を吐いた。


笹塚を多角的に見てみよう作文。学生時代中心。五十音であとカ行からワ行まで
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(20051118)