魔人探偵脳噛ネウロ

果敢無い佳城

俺が死んだら、墓なんて作ってくれる奴もいないから、だから何処かで野垂れ死ぬのが理想っちゃあ理想だな。

いつもそんな事を、こんな最低限の生活用品もろくに置いていない様な寂しい部屋で、コンビニで買える様な安い酒を飲みながら言う人に、自分も同じ様な安い言葉を吐く代わりに安っぽいキスをして、そうしてセックスに持ち込む。いつもの事。
自分が何処までも卑怯な手段に講じても、それで彼をどうにかこちらに留めたいと思っていても、それは堕ちる事じゃないよ筑紫。それは唯本能に忠実なだけなんだから、卑怯でも卑劣でも何でもないんだ。――だからお前に、俺を引き止める事はできないんだよ。諭す様な口振りに酷く苛ついた。平素冷たい躰はそこにあって彼は眼の前にいて自分に抱かれようとしていて、それでも尚そんな言葉を平気な顔で吐く。だから今度は卑しい汚い言葉を吐き捨てた。――貴方は。
貴方は自分一人で生きていけると思っている。でも結局貴方を生かしているのは貴方以外の存在じゃないですか。姿形一切解らない幻みたいな蜃気楼みたいな、そんな存在を追って貴方はあちらに行くんですか。
継ぐ息も侭ならないほど、唯言葉を闇雲に吐いては彼の躰を掻き抱いた。――筑紫。腕の中からの声。 そっと腕に触れた病的に青白く細い指。

筑紫。蜃気楼に、人は殺せない。

そんな解りきった事、言いそうになって自分自身が発した言葉を思い返して言いかけたものは霧散した。きりっと爪を立てられ。
――蜃気楼に人は殺せないんだよ、筑紫。
確かに、そうだ。そうとしか言えない。実体の無いものに実体在るものは殺せはしない。――彼の家族を殺した者も、蜃気楼などではなく、実体の在るもの。人間。彼が殺そうとしている者も、蜃気楼なんかではなく、人間。彼の家族を殺した人間。

それでも、笹塚さん。笹塚さん。笹塚さん

――俺だって、蜃気楼は抱けません。

貴方が消えたら、俺は貴方じゃない人間と熱を共有するしかないんです。


それだけの理由で、だから彼を追って堕ちる事なんて自分には端から無理な話だった。


入庁している時期設定。
筑紫笹塚好きの皆様に謝れ。筑紫さんが余りに小さいよ。

(20051106)