魔人探偵脳噛ネウロ

形無しの人形

人形的だと言ってもその動作や容姿が人形のようだというわけではなく、ぱっと見た時第一印象として彼は人形だった。
人形的だと言っても彼は間違いなく人間で、赤い血が通い、皮膚は薄く冷えてはいるものの押せば戻る弾性を持ち、愉悦に溺れるだけの感度も持ち合わせている事を自分はよく知っている。 煙草ばかり吸うかさついた唇は少なく言葉を発し、光を返さず鈍く留める眼は僅かに動いては時々伏せられて隠される。動かすと眼を開けては閉じる人形のようにも見える反面、その眼が伏せられる時は大抵「それ」の前でもあり。
骨格が解るほど細い、その実硬く緊密な筋肉で覆われた躰も、背が高い分細さの実感は増し。昔の西欧の芸術家達が理想とした体型に近いのだろうと思い、彼ら彼女らは同性愛者が多かった、と。服を身に着けている最中の年上の男の、矢張り背中に浮く骨を見ながら思った。
笹塚さんの躰は、他の人と較べて珍しいくらいに骨に綺麗に肉付いているから、細く見えてしまうんですね。
そう言って笑えば、そんな気持ちの悪い事を言うのはお前が初めてだよ。苦笑いと共に薄い背中に返された。
――あぁ、人形的、な人だ。筑紫は自分の中にある澱んだものに眼を背けながら思った。――人形的な人だ。
たとえば、自分の言葉の裏にわざと臭わせた他の人間の、彼以外の存在に、微動だにしない薄情な背中。
そのくせに、自分以外の存在を臭わせる言葉をするりと滑り込ませる巧妙さは人間そのもので。
人形的なのに、その形に囚われないような、人形的な人。
そんなつまらない言葉遊びをして、彼を抱くのか、彼が抱くのか、解らないその存在から眼を逸らしている自分は何処までも人間でしか有り得ない。そんな業を感じた。


気持ち学生時代で・2
181で70って引き締まったスポーツ選手みたいな躰だと思う。三十路の躰にしてはいい方だ

(20051104)