けもの、みち
「あの男は狩人というより獣よ」
万事屋の娘の父親、宇宙でも名を馳せた男に対してのその評は、はたして自分にも当てはまるのだろうか。
守るべきものを置き去りに、ただ獲物を狩るそれだけを目的とした行為をどうこう言う資格はない。それが悪い事なのかどうかを判別し糾す事がそもそも出来ない。結果論だ。結果的に守っている事になるのならばそれ以上つべこべ言われる筋合い等ないと自分は言うだろうし、あの父親にもそう言う権利がある。
結果、最終的なそれ、だ。非難され批判され後ろ指を差されようとも。
目的は行為を正当化するという、逆に行為が結果的に「目的」を果たしているとみなされるならば、たとえ道を踏み外した行為であろうとも矢張り正しいのだ。
その目的が、後付であろうと無かろうと。
……本当に、
本当に?
「俺は、どうだ」
だからそんな事を聞いてしまったのか。
聞く類の事ではないだろうに、聞いてしまったのか。
「俺は、狩人か、それとも、」
「トシは防人だろ」
――あっさり、さらりと言ってのけた、隣にある顔と、
同じくらい間の抜けた顔を。
「いや、何て言うの、防人兼狩人みたいな? 攻めの護りっていうか? いや、そしたらやっぱ狩人? 因みに俺は恋の狩人だけどね、トシは……いや、やっぱお前なんか狩人じゃない、女百発百中十割男なんて狩人なんかじゃないいいいぃぃぃっっ」
それは唯のすけこましって言うんだあああぁぁっ、おいおい場違いに泣き出した総大将を、土方は呆然としながらも条件反射で「今はそんな事話題にしてんじゃねぇよっっ」、毒づいていた。
(何、)
『防人だろ』
(そんなあっさり言っていいのか?)
今までに、俺がどれだけの血の海を渡ってきたのか、屍の大地を駆け抜けてきたのか、知っているアンタが?
正気じゃない、狂っているとか、そんな判別付かないような、判別する様な理性の欠片も持っていなかった姿を知っているアンタが?
……それで、俺はいいのか?
獣でなくて、いいのか?
ただただ敵の咽喉を食い千切る牙を躰を八つ裂きにする爪を捨てて、アンタを守る為の刀を、俺は握っていいのか?
俺は、とっくの昔に、牙を折り爪を剥ぎ、刀を握っていたって、アンタはそう言うのか?
「……あー、本当敵わねぇ」
「何、それどういう意味トシ!!?」
「何でもねぇよ、それよりコッチ早く片付けちまおうぜ」
はぐらかし、始末された化け物の一部を、がつ、足蹴にした。
(化け物も、けものの一種なのかもしれねぇな)
だとしたら、コレは俺の抜け殻、過去の同属だったわけか。
軽く下らない言葉遊びを、一人心の中で。
がつ、再度蹴り。
……咽喉を食い千切る牙も、躰を八つ裂きにする爪も失くしてしまったけれど。
(俺には、刀握る手がある、意思がある、振るう、理由がある)
「……俺は」
俺は、人になれてよかったよ。
決して応えないその塊に、一人呟いた。