鬼はどちらに(一方的隠れ鬼)
「はぁー、寒い寒い」
「アレ、山崎やけに早い帰りじゃないですかぃ」
「あぁ、今日は前に非番代わってやった奴が、やってくれるって言うんで、任しちゃいました」
「へぇ、……それ、山崎、」
「はい?」
「勤務表に書いた?」
「げ、いや、書いて……スンマセン副長には黙ってて下さい本当お願いですから!!!
俺の命助けると思って!! 俺この間もそれやって副長にサソリ固めされたんですよ!!?
『新技試してやる』とか何とか態のいい事言ってアノ人!!!!」
「くくくくく」
「だからお願い……って沖田さん?」
「安心しなせぇ山崎。こんな美味しいネタを放っておく俺だと思いますかい?」
「いや、美味しいネタって、明らかに安心出来る文脈じゃないんですけど」
「まぁまぁまぁ、ちょっと付いてきなせぇ」
「知ってますかぃ山崎ぃ」
「何ですか、沖田さん」
「アレ、見てみなせぇ」
「?」
「土方さんでさぁ」
「はぁ……ってやっぱ沖田さん……ぐふっ!!!」
「ちょっと静かにねー、ハイハイ。
んで、奴ぁいつもこの時間になると、ああやってあそこにいるんですぜぃ。
こう、陣取って。邪魔で邪魔で仕方ないんでさぁ」
「はぁ……」
「んで、待ってる」
「……誰をですか?」
「さぁ」
「さぁって、沖田さん知らないんですか!?」
「だから頼もうと思うんで」
「へ?」
「今から俺はちょっくら外回り行ってくるんで、奴の事、見つからないよう見張ってて下せぇ。
いいですかぃ、絶対にばれちゃいけませんぜ」
「って、今行って……いや、何かおかしい……」
「じゃあ、ヨロシク頼みましたぜ山崎ぃ」
「ちょ、待って下さいよ、って沖田さん……!!」
「……総悟、山崎知ってるか」
「さぁ、知らねぇですが、何の用で?」
「……煙草、買いに行かせようとしただけだ」
「ほぉ、俺はてっきり誰か待ってるからかと」
「……別に誰も待っちゃいねぇよ」
「へぇへぇへぇ」
「……3へぇって言いたいのかテメェ」
「そういや前も随分ここに居ましたよねぇ」
「……お前俺の観察でもしてんのか?」
「そんな、土方さん観察するなんて出来ませんぜ。
観察している内に斬ってしまいそうでねぇ、未完のままに終わりそうなんで。
あ、今から観察していいんで?(※訳『斬っていいんで?』)」
「テメェ、今かっこ注釈で『斬っていいのか』って言外に言ってただろう……」
「そんな事ぁありません。かっこ訳で『斬っていいんで?』とは言外に言いましたがね」
「いい度胸だコラ、刀抜け、久し振りに相手してやる……!!!!」
「そういやここって、
あの襖を開けると屯所の入り口が向こうから解らない程度に見えるんでさぁ。
土方さんは知ってたのかぃ?」
「……んな事知る訳ねぇだろうが」
「へぇへぇへぇ」
「都リビアのイカスミに出演予定でもあんのか、テメェは先刻から」
「だって冬も酣のこの時期に、襖開けてるなんて、
てっきり誰か想い人でも待ってんのかと思うのが普通で」
「……テメェが普通ならこの世の基準は異常と呼ばれるものでいいと俺は思うがな」
「話逸らそうと思っても逸らしきれてない時ほどみっともない時はありませんぜ」
「……総悟テメェもう堪忍袋の緒が切れた待ちやがれこらああぁあっ」
「あ、何か副長出てっちゃったよ、俺まだ見張ってるべきなのかな……」