銀魂

ラヴホリックメイカ

亀裂の脳が。
二本の脚が。
























心臓が、震える。
ぐっと、引き絞られて、詰まって、でも一杯に溢れそうにどんどん何かが膨らんで。煮え切らない何かで一杯になりそうで、でもならずに。咽喉元にまでせり上がってくるだけで、その先、までは行かず。
収縮と、膨張は、相反するものであるはずなのにそのどちらでもある様な。
満たされる事なく、あと少しで、溢れる、そう思った瞬間にはさぁっと波は引いていく。底に穴でも開いてしまったかの様に、端を掴む事すら出来ずにそれは逃げ去ってしまう。

心臓が、戦慄く。
心臓の、それよりも下にある臓腑が引き攣った様に思えたけれど。
ばん、張った様な臓腑の感覚は、中のものが強引に体内を圧迫するからで。
圧迫、同時に自分の下半身は痙攣を起こしたかの様に震えて、ぴん、筋肉が撓ったけれど、自分の躰じゃない様な浮遊感。頭はやけに冷静で。
先刻掴み損ねた、何かの切れ端をまた探して、そうして今度は波に飲まれてそれを追う事が出来なくなる。今、これに逆らえない、そうと解る一種の悦楽へ一直線に流されて行く。
あと、少しで、あと少しで。
頂へと、行けるのに。もどかしい気持ちで波に攫われてしまう。

心臓が、泣き出す。
背中を走る、その柱の骨を、素手で掴み引き剥がされる様な、肉と皮とが付いた状態のまま、躰からもぎ取られる様な。これ以上ないくらいに乱暴に、こちらの都合など知った事ではないと言う様な、外側からの圧倒的な力。
尾てい骨から、べりべりと躰から引き剥がされていく、壊されて殺されていく。頚椎まで、一瞬で。肉と骨が分離する。
反面、鈍らの刀で、脚の間から脳まで真っ二つに裂かれる様な感覚にも似て。
鈍いにも拘らず寧ろその鈍さに疼く、様な。早く、早く。自分から急かしてしまう、何て愚かしい姿と心で自らを嘲笑いながら。
内臓が潰され、肉が裂かれ、皮膚が破かれ、咽喉を突き破られ、脳まで。疼く躰は内側から掻き回され、支配され。
痛みでもなく快感でもないそれを、恍惚として甘受してしまう。


躰は肉片に、骨は欠片に。


肉と、骨は、離れて。

躰と、心は、

躰と、心は?




 ふくちょう




細く掠れた声で。


 ふくちょう


女々しくも、名前を呼んで。


 ふくちょう
 ふくちょう
 ふくちょう


歌を覚えたばかりの鳥の様に、唯無心に。


 ふくちょう
 ふくちょう
 ふくちょう
 ふくちょう



 副長











――あぁ、
こんなになっても




















躰と心は離れない。































亀裂の脳が。
二本の脚が。
止まらない時間のなかを。
真実止まらない時間のなかを。

只そのなかを。








愛:会意兼形声。旡(カイ)とは、人が胸を詰まらせて後ろにのけぞったさま。愛は[[心+夂(足をひきずる)+音符旡」で、心がせつなく詰まって、足もそぞろに進まないさま。  (『漢字源』 / 学習研究社 刊より)
作中の詩:草野心平/止まらない時間のなかを『草野心平詩集』思潮社 より引用・抜粋

土山:R-12:ココロとカラダは?