声音低く語れ。愛を語るならば
「代わりにも、なれないんですか」
そう言った山崎の言葉は、多分一生忘れない。
「……なれねぇ、な、」
そう、返すしかなかった自分の不甲斐無さも、一生忘れない、忘れられないだろう。
それでも、俺はこんなにアンタだけなんだ。
何かを信じるという事は、何かを裏切る事だと、だからこそ信じるというのは残酷でそれだけ価値がある事なのだと。
アンタを信じる、その反面で俺は、
ずっと山崎を裏切り続けてきたんだ。
俺は、俺の命は近藤さん、アンタのもんだけどよ、
俺の命は、奴にだけ、山崎にだけ、奪われても仕方ねぇと
そう、思っている。
山崎にそう言ったら、「返り討ちに遭うのは御免ですよ俺」、憎まれ口を叩いた。
「副長、絶対問答無用の条件反射で俺を斬り殺すでしょう」
山崎の言葉はあながち間違いでもなく、こいつの前でそんなに人を斬っていただろうか、考えようとして止めた。恐らくこいつは単純に俺の背中を見ていただけだ。親の背中を見て人は育つと言うが、あれに近いだろう。――いつだって、俺の背中は血塗れだった。
「……俺だって、簡単にくれてやる気はねぇけどな、」
目上の人間に対しての礼儀がなってねぇ様な人間に、みすみす殺されてたまるかよ。嘲笑って返された俺の言葉に、山崎は眉根を寄せた。
「そもそも、俺の命は副長に預けてんですから、副長死んだら誰に預けりゃいいんですか」
俺の命、ホームレスにする気ですか。
そう言えば、そんな事を前にも言っていた。思い出せば、「忘れるなんて、とことん酷い人ですねアンタ」溜息を吐いた。
(ホームレス、)
お前の戻る処は俺だって言うのか、山崎?
大した重みを持たなかった言葉尻を、心の内で小さく笑う。随分と物騒な塒じゃねぇか、おい。
「言っとくが、そんな事、俺は知らねぇよ、」
勝手に預けてんじゃねぇ、迷惑だ。紫煙と共に乱暴に吐き出せば、
「副長こそ、勝手でしょう、」
俺が貴方の命を奪うなんて出来っこないのを知っているくせに。
腕の問題でも、立場の問題でもなく、そんな事関係なく絶対に。
微かに震えた語尾を捉まえる様に、山崎の肩を抱き寄せた。
「……せいぜい、俺以外に殺されない様にして下さいね」
沖田さんとか。色気の欠片も無い言葉に、うるせぇ、黙らせる様に唇を塞いだ。