銀魂

或る青年の手記、或いは独白に似せた遺書

貴方を忘れない事
それが俺の懺悔。俺の罪
いつ誰をどうやって殺したかなんて覚えてなんかいられない
(前はそれでも覚えていたんですそれが俺が出来る唯一の罪滅ぼしだったんです)
新しい事を覚えていく為に忘れていくのなら
(名も知らない顔すら覚えちゃいないそんな人間を覚えて貴方達の貴方の事を忘れていくのなら)
新しい事を記憶せずに、忘れないでいるままの方を選ぶ
(一切躊躇いもなく、俺はそれを選んだんです)
忘れたくなんかない
(鮮やかに色付く日々の事を)
貴方が触れてくれた時の手の温もりとか感触とか
(貴方の手はいつもひんやり冷たくて俺のとの温度差が心地良かったんです)
過ごした日々。貴方の事
(貴方にはいつも怒鳴られてばかりいました)
いつまで生き残っていたってもう生きる意味なんてないのに
(俺は独りになってしまいました)
貴方を殺した時点でこの手で殺した時点で生きる事に希望なんて見出せなくなっていた
(俺は上手く貴方に死を齎せましたか)


生きる意味なんて、欠片もないのに
(意味って、何)


それでも

それでも死ねない俺はとことん最低で最悪であいつらより虫けらな存在で
こんなにも卑小な人間で
(……あぁ、本当に)

死にたくなんかない
(ごめんなさい)
死にたくなんかないんだ
(ごめんなさいごめんなさい)
死んだら、もう貴方の事覚えていられない
(――許して、下さい)

死んだら、もう何もない


どんなに血に塗れても血に塗れた手の中の、貴方の手の感触が消えていっても
(もう、血の温かさしかぬるりとした感触しかこの手にはないんです残っていないんです)
覚えているんだ
(――死んでまで、)
貴方の事、忘れられないんだ
(死んでまで貴方はこんなにも俺を縛り付けるなんて酷い人です)
俺に、生きている意味も価値もなくとも
(もう、笑っちゃうくらいに)
貴方の記憶は意味があるんだ
(こんなにも躰の中頭の中貴方だけなんです)
貴方には価値があるんだ
(貴方、だけ)
貴方の記憶だけが、俺に生きている生きていく理由をくれるんだ
(俺は、馬鹿だから誰かに生きていく意味を理由を聞かなければ判らないんです)
どんなに人を殺しても
(大丈夫、)
生きたいんだ
(俺の行動の責任は俺が負います)
貴方の事、一分一秒一瞬でも永く覚えていたいんだ
(貴方に、俺の罪を擦り付けようなんて転嫁しようだなんて考えちゃいませんから)
俺に、死ぬ意味も殺す価値もなくとも
(俺に殺された人、ごめんなさい)
貴方の記憶が、あるんだ
(ごめんなさい、殺したのが俺で)
もう二度と共にいられないならせめて

せめて

出来るだけたくさん、貴方の事を、心臓とか脳とか躰に刻み込んでおきたいんだ
(耳なし芳一、みたいに全身全霊に)
たくさん、たくさん、一分一厘隙間もないくらい
(あぁ、あれは耳、取られちゃうんでしたっけ)
どんなに時間があっても足りないに決まってるから

だから、未だ生きていたいんだ
(ごめんなさい)
生きなきゃいけないんだ
(ごめんなさい)
未だ刻み足りないんだ
(未だ、生きています)
今の俺を見たら貴方は怒鳴るんだろう
(未だ、貴方の下へは行きません、行けません)
それから哀しそうに忌々しそうに乱暴に俺を抱き締めるんだろう
(行ったら、またせっせと働かせてもらいますよ)
馬鹿野郎、そう言ったっきり黙るんだろう
(今まで十分、本当に長いこと使われてきましたから)


それでも
(また、)

(未だ)


俺の懺悔、俺の罪



貴方を忘れない事







山崎:懺悔する相手もいない