銀魂

血煙の中で子供

人を斬るのに罪悪を感じるなんて、そんな殊勝なタマじゃないもんで。
斬って捨ててはまた繰り返し。
どうやらこうやら、乳飲み子の時分に血を飲んでいた様です。
血は生温く、それはそれは
吐き気を、催すくらいなのです。



















「総悟、」

その声に振り向けば、血糊を払いながら此方に歩いてくる土方が見えた。
「終わったか」
そう、確認でもなく発されただけの言葉に応える事なく、沖田は刀にこびり付いた血を人指し指でつう、引き伸ばした。今し方斬り捨てた、攘夷志士の――同じ人間の血。空気に触れたばかりのそれは、未だ温かさを保っている。
アツイ、音にせず僅かに口を動かす。
「……何やってんだお前」
気色の悪い事してんじゃねよ、土方が吐き捨てれば、沖田は口の端をくい、歪めて哂った。
「気色悪ぃとは人聞きの悪い事言いまさぁ」
指についた血を擦ると、それは指にべたりとした感触を残し、右の手の指の腹は満遍なく薄い赤で染まった。
アツイ、再度――今度ははっきりと呟く。

「これ、人の血なんですねぇ、」
どろりとしていて、まるで人間の性を表している様な粘り。

「やっぱり、人間は血まで粘っこくていけねぇや」
この分だと、骨の髄まで粘っこいんじゃないですかぃ。

相も変わらない、歪んだままの表情を見せる沖田に、土方は眉間に皺を寄せ、小さく舌打ちした。
「莫迦な事言ってんじゃねぇよ」
さっさと行くぞ、土方は乱暴に沖田の刀を持っていない方の腕を掴んだ。――薄い皮膚の下の筋肉は、未だ完全に大人に成りきっていない。元々が余り筋肉のつかない体質という所為もあるが、それでも矢張り、細いと感じさせる腕だった。

「……いけねぇや、土方さん、」

沖田はぽん、表情を忘れたのか、能面の様な顔をして言った。
「あ?」
不機嫌に返した土方の、その顔を見てくすり、肩を竦める。


「アンタ、何優しくなってんですかぃ?」
アイツに影響されたんで?


くつくつ俯き哂う、小さな躰の少年を――そう、彼は未だ少年なのだ――片腕で己の懐に抱きこんだ。片腕で抱き寄せる事が出来る様な小さな躰だったので。

何時まで経っても、土方は思った。何時まで経っても、こいつはこんなに小さい。

「――俺は昔からそうだっただろうが、」
しかし、口から出たのは、普段と変わらない調子の言葉で。
「そうでしたっけねぇ?」
生憎と覚えちゃいないんで、己の広い胸の中で、尚くつくつ哂う沖田の柔らかい髪に鼻を寄せた。
「……お前、髪にも血の臭いついてんからな、」
ちゃんと洗えよ、そう言えば沖田は、アンタは躰に煙草とマヨネーズのにおいが染み付いてまさぁ、哂ったまま言った。


土+沖:どうやらこうやら血飲み子だった