痴寂な手
土方さん、そう呼ぶ時は決まって夜に戯れている時だ。
戯れといっても男女のそれではなく、唯互いを静かな微熱を以って慰め合うに過ぎない。
副長、から、土方さん、呼称が変わる瞬間に土方もまたいつもと違う名を呼ぶ。
それは実際同じなのだけれども、声の調子が幾分潜められて鼓膜にこびりつき、耳からだけで山崎の躰を存分に犯した。
山崎、山崎、そう何度か名を呼ばれるとずっとそのまま続けて欲しいとねだる。
どこの餓鬼だ、言いながらも土方はその我侭を受け入れる。
山崎、山崎……
声音低くその名を呼ばれるも、その口はいつも次第に言葉を失くしていく。
(ああ)
最後の息が詰まった瞬間、言葉は死ぬ。
土方が決してその口に出さない尊い、遠とい人の名を、山崎は聞いた。