もう、見るにたへない。

Koaosの触角のむかふから、夜がおりる。

なんと狡猾稀れな夜であらう。けふも蝕まれた夕餐がちかづく。ゲオルグ・グロッスの悪の華。漫画の上の、つめたい空気の翅。

わたしはいくたび夜を数へあげたか。わたしはいくたび忍苦の血をすすつただらうか。

雨あがりの闇に、捕虜の首の座が輝いてゐる。空間を埋める退屈の花。すると花が流れてわたしを埋めるのである。いつかわたしの透明な思想だけが、そのなかで足掻き苦しむ。まて、足掻き苦しむのはわたしだけではない。透明なわたしの思想だけである。

しばらくは払暁戦。だが、暁は遠くにあるのであらう。無限の夜が、その向ふに錘のやうにつらなる。

一ときの間は死んだやうに。
…………
……




しばらくは払暁戦 ――いまぞ殺戮をはる時  宗治 / 高祖保
『高祖保詩集』 思潮社刊より

T:The baby needs shoes.
――運がありますように

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